
あべのハルカス美術館へ「超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA」を見に行ってきた。前回から4年ぶりの開催である。現代と明治時代のすごい作品を同時に観られる企画は、今回も「なんでこれをその素材で作った?」ぞろい。

ポスターにもなっている前原冬樹氏の作品は、スルメに割れた湯呑み(しかも懐かしい水玉柄)。これ、スルメ本体だけでなく洗濯ばさみも一木で作ってあるのだ。他にも古びたグローブや壊れたブランコなど、うち捨てられたものを木彫で表現し、油彩で古色をつけるのがスタイル。きれいなものをいくらでも創れる技で、あえて朽ちてゆくものを手がける。いや、朽ちてゆくものを芸術にできるのは、この腕あってこそやと思わせる。

大竹亮峯氏の「Innocent」は月夜に開く月下美人の花瓶で、瓶部分は木、花は鹿角を極限まで薄く磨いて作ってある。展示はきれいに開いていたが、元々の花びらはすぼまっていて、花瓶に水を入れると湿気で開花するようになっているそう。ひょえー。

TVの日曜美術館でポケモン×工芸展の紹介をしてて、金沢まではよう行かんけど観たいなぁと思ってた。で、この「三毛猫」という吉田泰一郎氏の作品を観て、「あっイーブイ創った人や」とすぐわかった。銅をメッキや化学変化で着色し、細かいパーツ(いろんな植物)を貼り合わせて猫になっている。傍らの、これから餌になるのか、食べ残したのか、魚のアラもリアルそのもの。他にも螺鈿でデジタル数字をびっしり埋め込んだ香合も、ポケモンの人やった。

私がすごく気に入ったのは、長谷川清吉氏の作品。プチプチや紙袋、ゴミ箱からこぼれたアイスの棒などを銀や真鍮、銅で創ってある。プチプチの奥に見えるのは真鍮製の爪楊枝。「触ったら硬いし冷たい」ということを忘れさせる精巧さに、目が騙される。こういうお茶目ができるのも、技がないとね。それらしいぐらいの完成度では、観る人を感動させられへんし。
そのいっぽうで、どこまでも本物に近い、触って硬いので?!となるような柿や無花果を木彫りで仕上げる岩崎努氏のような方もいる。明治時代の作家では安藤緑山氏の象牙彫刻が好きなのだが、岩崎氏の竹の子は安藤氏の竹の子を凌いでいる感じやった。ちなみに今回は、写真可の作品だけなので、全部観るにはぜひ会場へ足を運んでね。


ガラスで微生物の世界を表現した青木美歌氏の作品。安い言い方やけど、タメイキが出るほど美しい。微生物の働き、語らい、繊細でいて生命力を感じさせる。杜氏が麹と対話している、そんな声が聞こえてきそうだ。この方は41歳で亡くなられたようで、すごく惜しい。

稲崎栄利子氏の作品は、細かい磁器の輪を編み上げてある。焼くのも組むのもたいへんな作業、手間が超絶である。けど、青木氏や稲垣氏の作品を観ていると、感性や表現にも男女の違いが出るなぁと思う。差別でなく性差ってある。ほかにも小坂学氏のペーパークラフトもすごかったし、今回は現代作家の作品が素晴らしかった。作品点数は多くないのに、じっくり観ていくもんやからくたびれた。ただ、こういう精巧な作品を観るときは、拡大鏡が欲しい。どんなに顔を近づけてもわからん技巧、細部までじっくり観たいやんね。

出口の売店にて。スルメの作品が看板なので、お土産もさきいかとイカピーて…さすが大阪。
★★↓一日一回ポチッと押して↓応援よろしくですm(._.)m お勧めブログも満載★★

#京都